視覚障害は、視力障害と視野障害に大別されます。
視野障害の代表的な病気が緑内障です。一般的には、眼圧が上昇することで視神経に負担がかかり、緑内障になります。
緑内障とは、視神経乳頭部で視神経が障害される病気で、特徴的な視神経陥凹と視神経線維欠損、視神経乳頭の出血とともに、視野障害を起こします。眼圧がかなり高くなれば、吐き気、頭痛、眼痛などの症状が現れますが、早期では一般的に自覚症状に乏しく、進行した場合に視力低下や視野欠損を自覚します。
自覚症状に乏しいため、末期まで放置されてから眼科を受診するケースも目立ちます。
緑内障は、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、および眼圧が正常な正常眼圧緑内障などに分類されます。高齢者では正常眼圧緑内障の割合が高くなっています。
近年、日本人の5%以上が緑内障で、70歳以上に限れば13%以上が緑内障であることがわかり、非常に一般的な病気であることがわかってきました。高齢者によくみられる白内障と自己診断しないように注意してください。
緑内障の症状には、急激に眼圧が上昇し眼の痛みや頭痛、吐き気など激しい症状を起こすもの(急性緑内障)と、ほとんど自覚症状がないまま病気が進行してしまうもの(慢性緑内障)があります。近年、眼圧検査・隅角検査・視神経の検査により早期発見が可能になりました。また、治療法は進歩し、かなりの患者さんで視野障害の進行を防ぐことができるようになってきました。緑内障によって障害された視神経は治療を行っても元にもどらず、すでに失われてしまった視野も回復しないので、早期に発見し進行を防ぐ治療を行うことが大切です。
緑内障は、眼圧検査、眼底検査、隅角検査、視野検査などで診断されます。定期検診などで異常があった場合、必ず眼科医の診察を受けるようにしてください。
緑内障の治療は病状に合わせて選択されます。大多数を占める慢性緑内障で視野異常が進行していない場合は、まず薬物による治療(主に点眼薬)から始めます。大きく分けて5種類の緑内障治療薬があり、緑内障のタイプ、眼圧の高さ、視野異常の進行度などに合わせて処方されます。
薬物では眼圧が十分に低下しない場合、視野異常の進行が止まらない場合はレーザー治療や手術治療が行われます。
開放隅角緑内障では、詰まった排出管をレーザー線維柱帯形成術で通します。
閉塞隅角緑内障では、レーザー周辺虹彩切除術またはレーザー虹彩切開術で虹彩の中に開口部をつくります。どちらの手術も、房水の排出を改善する手法です。
レーザー治療は麻酔の目薬をしたあとにレーザー用のコンタクトレンズをつけて行います。多少の痛みを伴う場合がありますが、10分から15分程で1回の治療は終わります。レーザー直後は暗く感じて見えにくくなることがありますが、普通は15分程で戻ってきます。当日は特に安静の必要はなく日常生活に制限はありません。
薬やレーザー治療、手術療法で眼圧がある程度下がっても、それで治療が終わるわけではありません。定期的に視野検査を受け、視野障害が進行していないことを確認して、初めて治療が順調であるといえます。また、眼圧はいったん安定しても治療を中断するとまた変動します。緑内障は生涯にわたる管理が必要となります。
費用 | ||
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レーザー線維柱帯形成術 | 1割 | 約9,000円 |
2割 | 約18,000円 | |
3割 | 約27,000円 | |
レーザー周辺虹彩切除術 | 1割 | 約8,000円 |
2割 | 約16,000円 | |
3割 | 約24,000円 |
【高額医療費について】
高齢者の自己負担の上限は、従来の医療機関毎ではなく、患者毎(複数医療機関合算)の上限となります。超過分は、各患者様からの申請により償還されます。
正常眼圧緑内障では、高齢者の最も一般的な視力障害の原因である白内障と診断されることがよくあります。眼圧のみでの診断ではなく、視神経乳頭検査や視野検査を必ず受けるようにしてください。緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)では眼症状以外に頭痛、吐き気、嘔吐などの全身症状がみられるため、他科を受診してしまうことがありますが、視覚障害がないかの確認をすることが重要です。